研究大会

● 次回大会(2025年第19回大会)

 運営委員会・理事会とシンポジウム準備会の議論を経て、第19回研究大会は2025年5月31日から6月1日にかけて、現状では実開催とオンライン併用(部分的)による大会として開催される予定になりました。初日は明治大学生田キャンパス、二日目は明治大学黒川農場の施設を利用しての開催となる見込みです。
 なお、大会の詳細に関しましては2025年3月以降、参加の手続きは4月以降に改めてお知らせします。オンライン併用では「Zoom」という Web 会議用のアプリケーションソフトを使用する予定です。(オンライン参加を希望される方は安定した通信環境のご準備をお願いいたします)。

● 「一般研究発表」の申し込みについて

2025年第19回大会に向けて、一般研究発表を募集いたします。またワークショップ企画をお考えのグループがありましたら、別途、事務局までご一報ください。

研究発表申し込みの受付期間は2025年2月1日から2月28日(郵送の場合、25日必着)です。

発表は1人1 回とさせていただきます。2 人以上の共同発表の場合も原則として、1 回の発表とカウントいたします。ただし、時間枠の延長・拡大は可能です。必要がある際は、事務局までご相談下さい。

なお、発表は大会実行委員会での承認をもって決定いたしますので、申し込んだ段階では発表と決まったわけではありません。発表が承認された後、改めて確認のお知らせをいたします。

大会プログラムに掲載する原稿の詳細についても、そのさいに改めてお知らせいたします。発表のお申し込みは、別紙の「2025年 第19回大会研究発表申込書をご活用いただき、必要事項ご記入の上、以下の宛先までご連絡下さい。

発表時間は35 分(報告25 分+質疑10 分)です。

〔お申込み宛先〕
E-mail:  contact[at]synthetic-anthropology.org
※ 可能な限り、メールでのお申込みをお願いします。申し込みに関する必要事項を本文に直接ご記入頂いても構いません。

● 大会初日シンポジウムについて

◆ テーマ

人と自然の未来
―里山からの展望、失意と希望の30年をこえて—

◆ 大会シンポジウム企画趣旨

 20世紀自然破壊が深刻化するなか、人と自然の関係をめぐる言説をリードしていた英語圏の議論では、原生自然や野生生物の価値をどのように保護するのかという問題意識が強く見られた。日本では『環境倫理学のすすめ』(加藤尚武 1991)の出版を皮切りに、海外の議論をフォローしつつ、二次的自然環境の意義については西洋の後追いではない研究も進められてきた。こうした文脈で、一つの象徴的概念として注目されてきたのが里山である。
細かな議論はさまざまあるが、1990年代初頭までは雑木林の類義語のように見なされていた里山は、2000年前後に概念の拡張とも呼べる広がりを見せ、里海や里川、里沼などの派生語も登場するようになった。国際的にも生物多様性条約会議(COP10,2010年、名古屋)にて「SATOYAMAイニシャティブ」が推進され、「社会生態学的生産ランドスケープ(SEPLS)」として世界的に展開されてきた。
 こうした流れの中で、里山の研究者も、里山保全に携わる生活者や活動家も、里山を取り上げるマスメディアも、さらには小中学校等の教育現場でも、里山に対してある種の希望と可能性を予感していたように思われる。すなわち里山は、自然の複雑さや不思議さを学び感じる教育の場となること、自然に対する感受性といった環境徳を養う場になること、そうした徳を身に着けた市民が里山の保全に取り組むことへの淡い期待があったと言ってよいだろう。
しかし里山を巡る現在の状況は、そうした期待に十分には応えているとは言いがたいものがある。かつての里山を維持してきた農林業や地域生活との関係性が失われ、里山地域の空洞化が進む一方で、里山の保全活動に関わろうとする担い手、人材の育成や継承が進んでいない。里山の外に目を向けても、気候変動などの環境問題への取り組みはいずれも十分とは言い難い。
現状に対する危機意識、そこから生じる失意と憤りから、若い世代を中心に一部にはより過激な抗議活動に走るものもいれば、諦めから無関心になるものもいる。一時的に高まりを見せたメタバースや反出生主義への関心も、環境問題に対するニヒリズムが関わっていると解釈することもできるだろう。
本シンポジウムでは以上の現状整理をふまえた、あるいはこの整理そのものを批判的に分析する四名の登壇者に話題を提供していただき、会場の参加者とともに、里山を足がかりにしつつもそこに限定することなく、広く人間と自然の関係に希望を見出すための手がかりを改めて探ることを目指したい。

● 大会二日目、里山フォーラムについて

フィールドガイド

川崎市麻生区黒川地区は、環境省の生物多様性保全上重要な里地里山、神奈川県の里地里山保全等地域、川崎市の緑と農の3大拠点に位置づけられている、都心から近い里山ランドスケープ(里地里山)です。黒川駅から黒川農場まで、昔からの道を歩きながら、谷戸の暮らしについて解説します。

黒川農場自然生態園案内

明治大学黒川農場は、コンセプトの一つ自然共生に里山との共生を謳っている面積12haの50%が里山(林)の大学農場です。里山ランドスケープ(里地里山)としては広くないのですが、場内の小さい谷戸一つを自然生態園として丘陵地の自然の成り立ちが理解できるように管理しています。工事の際の自然保護上の課題や現在のナラ枯れ等の対策について現場で説明する時間を設けます。

◆ 里山フォーラム

黒川農場が位置する多摩・三浦丘陵群は里山保全活動が活発に行われてきた地域です。保全上重要な里山の研究者、自然を生かした里山公園(公有地)の指定管理者、里山の市民の森(民有地)の管理者、自治体内の市民の活動のネットワーク、黒川農場における実務と里山講座などについて、楽しさ、稼ぎ、制約などについて話題提供していただき、里山と市民の関わりの将来について考えます。


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