2015年度大会

第10回研究大会(2015年開催)のお知らせ

日時: 2015年6月6日(土)、7日(日)
場所: 津田塾大学 小平キャンパス

参加費

正会員: 1,500円(2日間)
非会員: 1,500円(1日につき)
学生・大学院生: 500円
懇親会: 4,000円 当日参加可能

タイムテーブル

1日目 2015年6月6日(土曜日)

12:00 – 受付
12:30 – 13:30 総会
13:45 – 15:45 第10回大会記念フォーラム
16:00 – 18:00 若手シンポジウム
18:30 – 20:00 懇親会

2日目 2015年6月7日(日曜日)

09:00 – 受付
09:30 – 11:30 一般研究発表
11:30 – 12:30 昼休み
12:30 – 17:00 シンポジウム

大会テーマ

「転機に立つ人類社会 ― グローバル化のなかのコミュニティ・共生を問う」

(6月7日12:30~17:00 / 1号館1111教室)

シンポジウム趣意書

大会実行委員長 古沢広祐

総合人間学会の設立時、「……人類は、高度の物質文明を発展させながら、向うべき目標を見失い、自ら作り出したカオスの中に、当てもなく、さまよっている……人間を全体として見直し、文明のありようを根底から再検討するために現代の科学と哲学の精華を集め、自由で心ゆたかな共同討議の場を作ろう……」(設立趣旨、2006年)としてスタートした。これまでの研究大会では、環境破壊、生命倫理、戦争と平和、進化と人間、3.11震災・復興、人間の関係性、競争社会の歪などをめぐって、幅広い視点から本質の究明に取り組んできた。しかし、現実の世界はさらなる混迷を深め、いっそうのカオス状態に陥っているかにみえる。

20世紀末の冷戦時代(東西対立)を超えて、人類は地球的スケールで一丸となって貧困や環境破壊の難問に対峙する新時代の幕開けを迎えるかにみえた。だが21世紀の現実世界は、反転の様相を呈し始めている。9.11同時多発テロ(2001年)、世界通貨危機(リーマンショック、2008年)、不平等(貧富)の拡大、内戦と国家対立への傾斜、グローバル市場競争の激化と地方(地域コミュニティ)の衰退など、時代は逆回転を始めたかのようだ。

2015年度は第10回研究大会を迎えることもあり、本大会ではあらためて“人類社会は今どのような転機に立っているのか”、混迷を深めつつある人間社会と世界をどうとらえ、人類の行く末をどう展望するかについて、その手がかりを「コミュニティ」「共生・協同」「グローバル化」というキーワードのもとに探り、現状打開の道筋を見出したい。

第10回研究大会シンポジウムが開催される2015年は、世界史的な流れの中で注目すべき年となる。今年9月に開催される国連総会にて、かつて2000年国連総会を契機に定められたミレニアム開発目標(MDGs:2015年開発枠組み)から、新たに「持続可能な開発目標」(SDGs)が定められる見込みなのである。ふり返れば、冷戦体制終結後の1992年地球サミット(国連環境開発会議)を転機に、世界は南北問題(途上国の貧困解消)と地球環境問題を克服すべく地球市民的な連帯への歩みを始めたのだった。その1つの流れが開発目標を軸としたMDGsとして進行し、2015年以降はより普遍的な目標SDGsとして新段階を迎えようとしているのである。

しかし、SDGsへの道すじは困難をきわめている。現実世界はグローバリゼーションの波(市場原理主義の台頭)に翻弄され、貧富の格差は国内外で深刻化し、気候変動や生物多様性の危機的事態は改善どころか悪化の一途をたどっている。本シンポジウムでは、矛盾の根源を明らかにして、平和と環境共生を実現する世界をどう創り出せるか、ローカルからグローバルまで多角的な視点から掘り下げて議論していきたい。

司会
古沢 広祐 (國學院大學・環境社会経済学)
北見 秀次 (津田塾大学・哲学/社会思想)

講演者 (五十音順)
宮本 憲一 (本学会顧問・元滋賀大学学長・財政学/環境経済学)
津田 直則 (共生型経済推進フォーラム代表・桃山学院大学名誉教授・経済学)
澤 佳成 (東京農工大学・環境哲学)

 

第10回大会記念フォーラム

6月6日13:45~15:45 / 1号館1111教室

第10回大会記念フォーラム趣旨

堀尾輝久(本学会会長)

今年は学会発足以来10年目の記念すべき大会です。この聞の本学会の歩みをふり返り、今後の展望を掴むために、初代会長小林直樹先生と第二代会長小原秀雄先生をお招きし、発会以来会長を支え、運営委員会を担われてきた岩田さんと尾関さんと三浦さんにも参加していただいてお話を伺うことにしました。3代目の堀尾が司会を務めます。フロアーからも、特に若い会員の方からの討論参加を期待しています。

小林先生は憲法学者、法哲学者として研究の第一線を担われ、法と社会と人間の問題を探求し(「法の人間学的考察」)、さらに欲望や暴力の問題を見据えた人間理解にたつ平和の思想を深め、アクチュアルな課題を軸に総合的人間研究を進め、学会の創設、発展に尽くされてきました。

小原先生はアフリカをフィールドとする動物学者として哺乳類の生態と進化の研究を通して「ひとが人となる」プロセスを探り、それを「自己家畜化論」として展開され、さらに「人類は絶滅を選択するのか」は警醒の書として、そのインパクトは生物学を越えて人文、社会科学に及んでいます。

岩田好宏氏は高校の理科教師で生物教育、環境教育に取り組み、小原、柴田義松、佐竹幸ーの諸氏と人間学研究所を創り、さらに小林先生も加わって綜合人間学研究会を立ち上げ、その発展的解散を経ての、本学会の創立にかかわり、初代の事務局長を務め、現在も理事として学会を支えてこられました。

尾関周二氏は初代の学会誌編集委員長として学会創設を支え、現在は副会長として学会の牽引役を果たしています。言語哲学が専門でコミュニケーションと労働の問題に取り組み、環境哲学を通して総合的に現代社会と自然と人聞の問題を共生、共同の観点から捉えようとしています。

三浦永光氏は哲学、社会思想史の研究者として、広くヨーロッパと日本の近代思想を研究され、戦争と平和の問題にも発言されています。そのロック研究や内村鑑三研究にも人間への総合的関心が活かされています。学会では研究企画推進委員会をリードし、学会誌の編集に貢献してきました。

堀尾は政治思想から教育哲学へと関心を移しながら、人間と教育と政治の問題を、人聞の成長発達を軸とする発達教育学として構想し、人聞の綜合的研究に寄与したいと思っています。地球時代としての現代をどう捉え、どう生きればよいか、人間と自然、平和と共生は私たちの共通の課題意識です。

本学会には研究・談話委員会が主宰する談話会や研究会があり若手研究者の会ももたれています。また個別テーマの研究会(例えば自己家畜化研)もあり、日常的な研究交流が期待されています。これら研究会にはいずれも綜合人間学とはなにか、その対象と方法を探ろうと言う問題意識が共有されています。それぞれの専門学の成果に学び、その限界をどう乗り越えるか、越境した研究交流から先ずは始めようという共通の意識とともに、綜合の方法もまたとりあえずは多様であり、それだけに貧欲さと寛容さが必要なのだと思っています。それぞれの専門のその学の始まりに立ち返って学問史を辿ってみる事も新たな綜合ヘ向けての大事な研究作業であろうと考えています。

司会
堀尾 輝久 (本学会会長)

発題者 (予定)
小林 直樹 (名誉会長)
小原 秀雄 (名誉会長)
尾関 周二 (副会長)
三浦 永光 (元研究企画推進委員長)
岩田 好宏

指定討論者 (予定)
上柿 崇英 (理事・運営委員)
古沢 広祐 (理事・運営委員)

 

若手シンポジウム
「〈老〉と〈幼〉から考える人間の主体性」

(6月6日16:00~18:00 / 1号館1111教室)若手シンポジウム趣意書

若手シンポジウム趣意書

若手シンポジウム企画委員会

これまで若手シンポジウムは、第8回大会では〈老〉、第9回大会では〈幼〉を主題として扱った。そこで今大会は、これまでの2回のシンポジウムを踏まえて、〈老〉と〈幼〉を主題とする。これまでのシンポジウムのなかで浮かび上がった論点のひとつは、現代社会において、人間が人生における諸段階すべてで主体的に生きることの難しさである。言い換えれば、人間の尊厳を発揮することの難しさであり、個を尊重することの難しさである。現代社会において問題化されている学校教育の問題や福祉施設の問題を考えても同様のむずかしさに向き合わねばならない。

そこで今回のシンポジウムは、「〈老〉と〈幼〉から考える人間の主体性」をテーマとして議論したい。少子高齢化社会といわれ、〈老〉と〈幼〉が同時に問題化されながらも個別に語られがちな現状のなかで、〈老〉と〈幼〉を同時に議論の俎上にのせる意義もあるだろう。

専門的な知見を備えた者同士が現代的な問題意識から人間学的な問いを共有することでこそ総合がなされると捉え、今年度も会員の皆さんと問いを共有したい。身近なテーマでもあるので、ぜひ積極的に参加いただければ幸いである。

司会
大倉 茂 (東京農工大学非常勤講師・社会哲学)

報告者
福井 朗子 (山梨大学非常勤講師・日本思想)
田中 千賀子 (東京家政大学助教・日本教育史/美術教育)
藤原 敬 (立教大学大学院博士課程・教育哲学)

 

一般研究発表

6月7日09:30~11:30

A会場『政治・社会』(7号館 7308教室)
座長
河上 暁弘 (広島市立大学・憲法学)
上柿 崇英 (大阪府立大学・社会哲学)

A–1.「「積極的平和主義」と「消極的平和主義」―「戦争の放棄」こそ平和の理念」
漆田 典子 (人間を考える会・人間研究)
A–2.「闘技的民主主義論における他者の位置付け、差異の承認へ」
佐藤 竜人 (東京農工大学・環境政治思想)
A–3.「なぜ「共感」という言葉は多用されるようになったのか―新聞言説および最近の学術論文の言説から」
高橋 在也 (千葉大学・社会思想)、七星 純子 (千葉大学大学院博士課程・ケア論)
A–4.「メリトクラシーが持つ社会秩序の破壊作用」
金子 聡 (無所属・教育学)

B会場『人間学』(7号館 7309 教室)
座長
河野 勝彦 (京都産業大学・哲学)
太田 明 (玉川大学・教育哲学)

B–1.「総合人間学の先駆者としてのマルクス―「唯物史観」と〈自己家畜化〉論との連関の視座から」
穴見 愼一 (立教女子短期大学非常勤・環境思想)
B–2.「マックス・シェーラーの「人間」概念再考―ニヒリズムと動物化の狭間で」
岩内 章太郎 (早稲田大学・現象学/近代哲学)
B–3.「遺族ケアについての哲学的試論:故人とのつながりを維持すること」
片山 善博 (日本福祉大学・哲学)
B–4.「傷つきやすさ(vulnerability)の価値」
中澤 武 (明海大学・医療人文学)

C会場『教育・科学・学問』(7号館 7310教室)
座長
下地 秀樹 (立教大学・教育学)
田中 昌弥 (都留文科大学・教育学)

C–1.「学校における子ども・若者の学習における総合とは」
岩田 好宏 (子どもと自然学会顧問・環境教育/人間学)
C–2.「安藤昌益の学問批判―知覚の方法を手掛かりに」
岩村 祐希 (東洋大学大学院研究生・日本思想/人間学)
C–3.「科学価値中立説はただしいか」
宗川 吉汪 (生命生物人間研究事務所・生命科学)
C–4.「子どもの権利の教育法哲学的分析」
宮盛 邦友 (学習院大学・教育学)

D会場『環境・文化』(7号館 7311教室)
座長
木村 光伸 (名古屋学院大学・人類学)
木村 武史 (筑波大学・宗教学)

D–1.「現代アフリカにおける大型野生動物絶滅の構造的な理由の考察」
中村 千秋 (酪農学園大学/ NPO法人サラマンドフの会・環境思想)
D–2.「マレーシアにおける水資源開発と先住民の権利」
東 修 (広島大学・環境システム学/環境工学)
D–3.「現代日本人の宗教観と救済観―〈無宗教的〉日本人における救済の可能性」
石井 健登 (玉川大学大学院修士課程・人間学)