2024年第18回大会

運営委員会・理事会とシンポジウム準備会の議論を経て、第18回研究大会は2024年6月15・16日に対面とオンライン併用(部分的)大会として開催される予定になりました。前回同様、オンライン大会では「Zoom」という Web 会議用のアプリケーションソフトを使用する予定です。参加を希望される方には安定したインターネット環境のご準備をお願いします。ご懸念の方は事務局までご相談ください。参加方法などの詳細は大会プログラムでご案内いたしますが、以下に概要をお知らせいたします(以下記載にはNL48号と一部重複する箇所、修正した箇所がございます)。

開催概要

開催日:2024年6月15日(土)・16日(日)
会場:学習院大学(東京)およびオンライン(Zoom)
対面会場教室:北1号館4階401番教室(両日)・北1号館3階308番教室(16日(日)のみ)
参加費:1日1,000円(両日参加で2,000円)
会員・非会員、対面・オンラインの区別はありません。学生・減額会員のみ、1000円で両日参加が可能です。

参加方法

参加申込URL:https://synthetic-anthropology-2024.peatix.com/view
事前に上の参加申込URL(Peatix)からチケットをご購入下さい。
対面の方は当日受付でチケット画面または印刷したチケットをご提示下さい。
オンラインの方は、後日御案内するZoom URLからご参加下さい。
*Peatixの利用方法でご不明点がございましたら、ヘルプページをご確認ください。
*対面参加を予定されている方で、Peatixの利用が困難な場合は、当日現地払いも承ります。

日程(※は学会員限定)

◇1日目(6月15日)
9:10 ~ 11:10 KW委員会WS
11:20 ~ 12:20 総会※
13:00 ~ 14:20  特別講演
14:30 ~ 18:00 シンポジウム
◇2日目(6月16日)
9:00 ~ 11:35 一般研究発表※
12:20 ~ 14:20 若手WS
14:30 ~ 16:30 まなキキWS

大会シンポジウムについて

◆ テーマ
総合⼈間学から「ケア」を問う:⼈類・社会・個⼈

◆ 大会シンポジウム企画趣旨

「ケア」を、こんにち用いられているように、他者を気にかけ、寄り添い、援助するあらゆる営みを包括する広い意味で捉えるならば、人間における「ケア」は、「人間性」(humanity)そのものの問題だといってよい。
ダーウィンは、地球環境との関わりから自然選択による生物の進化を説明することで宗教的人間創造論に決定的打撃を与えたが、同時に、様々な宗教にみられる「利他」の黄金律こそ、その進化の流れの中でヒトが獲得した特質であったことをも指摘した。ダーウィン進化論のこうした側面は、20世紀前半にクロポトキンが「相互扶助論」において強調するなど分野を超えて広く知られ、一世紀以上立った今でも「見知らぬ他者への思いやりに関して、ヒトの右に出る者はいない」(マカロー『親切の人類史』)といわれるように、「人間」が「ケア」する動物であることの意義は再確認され続けている。
こうした「ケア」の問題は、18世紀のルソーの「憐憫」(pitié)、スミスの「同感」(sympathy)といった概念が示す通り、人類社会や近代国家を支える「正義」や「徳」をめぐる議論においても意識されてきた。17世紀の日本で出された「生類憐れみの令」が象徴するように、東洋においても儒教道徳や仏教における生命尊重思想などを通じて類似の問題が論じられてきた。近年でも、リベラル・コミュニタリアン論争の中でマッキンタイアが『依存的な理性的動物』を書き、「ケア」を必要とする相互依存的な生物としての人間が作り出す「徳」のあり方を問い直したように、国家や社会における「ケア」は依然重要な論点であり続け、21世紀に入ってますます盛んに論じられている。
こうした「ケア」する動物としての「人間」とは何なのか、という問いは、ユーラシア大陸と太平洋に挟まれた細い列島に住む1億以上のヒトの個体が共同して作り上げた国家が、その予算の3割以上を社会保障費に割いている現状に立てばこそ、より先鋭的に問われ得るのではないだろうか。資本主義社会における現実の「ケア」は、少なからぬ部分が低賃金労働や家族の無償奉仕で支えられており、ヤングケアラーや介護離職、ひいてはハラスメント、虐待など多くの社会問題の焦点となっている。2023年のノーベル経済学賞受賞者ゴールディンが分析した通り、「ケア」は男女の賃金格差をもたらす一つの根本的要因でもある。「ケア」は決して誰もが喜んでやりたいものではなく、むしろ、できるなら御免被りたい負担であるかもしれない。それでも私たちは、誰かに手を差し伸べたいと思い、あるいは誰かの手助けを期待してしまう。それは「人間」であるがゆえのことなのだろうか。
本大会では以上の問題意識に立脚しつつ、「人間」における「ケア」を再考することで、「人間」の一つの特徴としての「ケア」の諸相を追求し、現実の「ケア」の諸問題を乗り越えるための手がかりをそこに探ってみたい。

大会全体プログラム

◇ 1 日目(6 月 15日)

09:10~11:10 WS(1)
KW委員会 「総合人間学におけるキーワード(KW)とは何か、それは如何に記述されるべきか」
趣旨説明・経過報告 「第1期公募KW終了から第2期KW公募に向けて」
穴見 慎一さん(KW副委員長)
報告1 KW参考1「生命と人間の自律」     長谷場 健さん(KW委員長)
報告2 KW参考2「人新世って?」「健康を例に」  古沢 広祐さん(KW委員)
コメント全体討論 過去大会シンポ企画者や執筆者からのコメント、KW提案など
司会:太田 明さん(KW委員)
★参考情報 http://synthetic-anthropology.org/?page_id=2688

11:20~12:20総会

13:00~14:05 特別講演(オンライン)
「人間にとって、ケアとは何か ―人類学・霊長学から考える」
山極 壽一さん(総合地球環境学研究所所長、京都大学名誉教授)
(14:05~14:20 質疑応答)

14:30~16:30 シンポジウム「総合⼈間学から「ケア」を問う:⼈類・社会・個⼈」
報告1 資本主義社会におけるケアと経済の位置取り
──「切り離し、依存しながら、否認する」
桜井 智恵子さん(関西学院大学)
報告2 地域社会に埋め込まれたケア
―—<人間的なケア>の把握に向けた予備的考察
本多 俊貴さん(拓殖大学非常勤講師)
報告3 ケアから、ケアリングへ
―—ケアの継続が人の成長へとつながる学知
大橋 恵美子さん(明星学園国際医療専門学校)

16:40~17:30 コメント・パネルディスカッション
(コメンテーター) 高橋 在也さん(千葉大学)
片山 善博さん(日本福祉大学)
(司会) 蔭木 達也さん(本学会理事、企画担当)

17:30~18:00 質疑応答、全体討論 (後半セッションは、適宜の時間調整にて進行予定)
*シンポジウム終了後、学内にて懇親会を予定

◇ 2 日目(6 月 16日)

09:00~11:35 一般研究発表A/B(2会場、各4枠)
一般研究発表は1 セッション 35 分(発表 25 分、質疑 10 分)、入替時間 5 分です。

11:35~12:20 昼食休憩 (新年度の理事・役員で可能な方はランチミーティングを予定)

12:20~14:20 WS(2)
若手WS 「宗教生活のダイナミズム」
(報告) 内藤 幹生さん(元千葉県文書館嘱託職員)
前野 清太朗さん(金沢大学)
(司会 / 報告) 本多 俊貴さん(拓殖大学非常勤講師)

14:30~16:30 WS (3)
まなキキWS 「能登半島地震の災害対策の理想と現実:
―石川県災害対策本部員会の映像分析から」
(報告) 濱松 若葉さん(津田塾大学)
江頭 早紀さん(津田塾大学大学院国際関係学研究科修士課程)
柴田 邦臣さん(駒澤大学)
(司会 / 報告) 松崎 良美さん(東洋大学)