小林直樹初代会長のご逝去にあたって

小林直樹初代会長のご逝去にあたって    

 2020年5月20日 

会長 尾関周二

会員の皆様にはすでにご案内しましたが、本学会に大きな貢献をされた初代会長の小林直樹先生が本年2月8日に98歳でご逝去されました。

本年6月の本学会大会の際に「偲ぶ会」が開催される予定でした。しかし、コロナ禍のために大会そのものが中止されその機会をもつことができませんので、学会を代表してここにご冥福をお祈りして一言哀悼の意を表明させて頂きます。

  小林名誉会長は、小原秀雄名誉会長とともに、本学会の設立(2006年)のためにご尽力されました。設立大会には、小林先生のお言葉によれば「文・理科領域を代表する加藤周一氏(作家・評論家)と小柴昌俊氏(ノーベル賞受賞者・物理学者)のお二人の基調講演」を始め多分野の方々による講演会が開催され、多数の方々のご参加をいただき盛大に行われました。

 この設立大会に至るまでの3年あまりの研究会活動として、小林先生は自らのイニシアティヴによって様々な分野の著名人を招聘して講演会を開催されるとともに、『シリーズ総合人間学』(全3巻)の編集にご尽力された上での設立大会の開催でした。

 小林先生はご存じのように、憲法学者として護憲の立場から戦後の様々な論争をリードされた著名な学者ですが、定年退職後70歳代で若い頃から考えておられた人間学を研究することを一念発起されました。

小林先生は今日における「総合人間学」の必要性について次のように語られています(学会誌創刊号「発刊の辞」)。

 第一には、広義の「人間学」については、古来多くの成果があるが、それらは今日の進んだ諸科学(宇宙物理学、生物学、心理学等)の研究成果とはほとんど没交渉でそれらを踏まえた問題意識に乏しいという弱点があった。

第二には、個別諸科学の専門分野に特化した発展が著しいが、逆に全体としての人間の総合認識は欠如して行くという事態がある。「新しい総合性」を探求する必要がある。

 第三に、これまでの思弁的な人間学は今日人類が直面する世界問題(環境・戦争・人口、資源等のグローバルな問題)に真剣に取り組もうとする姿勢に欠けていた。総合人間学は、人間の生き方に直結する現実問題との取り組みをおろそかにしてはならないだろう。

 小林先生は、こういう基本姿勢を踏まえて自らも、学会の様々な催しや企画に積極的に関わられるとともに、自ら大部の著書『法の人間学的考察』や『暴力の人間学的考察』などを著わされました。

本学会は、こういった小林先生が提示された基本方針のもとに、毎年の学会の大会シンポジウムや書籍版『総合人間学』や電子ジャーナル版『総合人間学研究』を企画・発刊してきました。また、時宜に適った研究会や談話会なども定期的におこなってきました。

 昨年は、学会設立から10余年ということで、設立当時に起草された「総合人間学会設立趣旨」の改訂版を検討するWGが発足し、「総合人間学趣旨書 新版(2019年)」が起草され理事会・総会での承認を得て、現在ホームページに掲載してあります。  

また、設立当時、設立にかかわった主要メンバーのうちでは、私は60歳そこそこで一番若かったですが、現在では、その私も70歳代半ばになり、年長組の一人となりました。幸い、若手・中堅の参加も恒常的にあり、世代交代がうまく行われてきて、運営委員会・理事会において設立当初からのご高齢の方々は2,3人ということになっています。

 小林先生のご意思を受け継ぎ、今後の一層の発展をはかっていきたいと思っています。

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